強い欲求が主体性育む 教育理念に「国際理解」 

佐賀新聞掲載記事 

共同通信社提供「ニッポンの人づくり~グローバル人材って何だ? 交換留学㊦」  


【強い欲求が主体性育む 教育理念に「国際理解」】  


日本と海外の学校文化の違いに衝撃を受けた吉村直記(31)は、高校を出た後、大学で教育学を学んだ。中学高校の教員免許は取得したが、人間形成の重要な時期が幼児期にあると知り、いずれは自ら保育園を運営したいと思うようになった。  


卒業後は、病院や企業内の保育施設を運営受託する保育コンサルティング会社に入社。約一年半、保育の基本や保育園経営のノウハウを学んだ。  


25歳の時、保育園の設立を検討していた会社社長に誘われ、佐賀市内の「七賢人の里 おへそ保育園」の園長に。現在は0~5歳児まで、60人の園児を受け入れている。  


「違いをなくす教育ではなく、違いを楽しんだり、認め合ったりできる子を育てたい」。教育理念に掲げる国際理解は、留学体験を通じて必要性を痛感したものだ。  


なぜ、日本の子どもたちは主体的に行動する力が弱く、多様性にも背を向けがちなのか。「幼少期に自ら選択する場を与えられていないことが原因ではないか」と感じていた吉村は、子どもたちが自分の望む活動を選べる「ゾーン保育」を導入した。園内に読書やままごとなどの複数のスペースを設け、何もしなくてよい場所もつくった。 


 自由に好きな物を作っていいゾーンでのこと。4歳の男の子が「段ボールを切りたい」と言って、ハサミを借りにやって来た。ほとんどハサミを使った経験がない園児だったため、離れた場所で様子を見守っていた。  


厚手の段ボールは固く、なかなか上手にハサミが入らない。すると、男の子は近くにあった薄手の紙を手に取り、切り始めた。さまざまな切り方を試しながら使い方に慣れていくと、今度は再び段ボールに挑戦。見事に船の形に切り抜いた。  


やってみたい気持ちを他者に伝え、練習し、技術を獲得する。すべての根っこにあるのは男の子の強い欲求だ。「みんなでハサミを使えるようになりましょう、という教育では主体性は育たない」と吉村。多くの友人を作りたい一心で、懸命に語学を勉強した留学時の自分と重ね合わせた。  


9月下旬、輪になった園児に吉村が「みんなはお友達とどんなところが違うかな」と問いを投げかけた。週2回実施している「子どもの哲学対話」。身近なテーマを題材に意見を出し合う。正解を教えるのではなく、正解のない問いを考える。  


「お家が違う」「肌の色」「好きな絵本も」―。

「違うって嫌なこと?」「うーん、なんか寂しいかも」「じゃあ、みんな同じ洋服や髪形だったらどう?」「やだー、誰だか分かんなくなっちゃう」「考えてたら頭がモコモコしてきたな」―。 


結論は出さずに、吉村は対話を終える。「あなたはどう思う?」。そう問い続けることが、園児の自立につながると確信しながら。(敬称略)


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